理事長の発言<No.2009.12>21世紀の日本のかたち(24)
景観基本軸-東京の姿形について考える(6)

東京都は、都全域をカバーする「東京都景観計画」を策定しています。計画の前提に「東京都景観づくり基本方針」をつくり、「自然を生かす」「歴史と文化を伝え、生かす」「地域の個性や多様な魅力を育てる」を掲げています。そしてこの景観計画の柱の一つに「景観基本軸」を設定し、これをテコに東京の景観向上をめざすというものです。

この中で、隅田川、玉川上水、神田川などの水系河川沿いの軸や、国分寺、南北などの崖線は文字通り軸というにふさわしいのです。玉川上水、神田川(神田上水)は、江戸100万住民の命を支える水でした。隅田川は、セーヌ川が花の都パリを、テムズ川が重厚なロンドンを体現しているように、江戸・東京の歴史を体現して流れています。

景観基本軸は、市民が日常生活を営んでいる家や近隣などの小景観と、大東京成立のバックグラウンドである関東平野の地理、地形、遠望、ないし俯瞰としての大景観のあり様とを計画的につなぐ役割をもつものです。これら景観基本軸はいくつもの市区を貫いており、都、市、区が充分に協議しつつ工夫を凝らした施策が期待されます。

先年、景観法が制定され、全国のいくつもの自治体が景観団体になっていますが、市民参加の景観づくりを通して「地域の個性や多様な魅力」を育ててほしいものです。